2000年7月31日、ストラティージック・セーフティー(製造物責任訴訟担当弁護士向けの調査会社)は、米国フォード・モーターとブリヂストンが、91年以降のフォード製小型トラックに装備されているブリヂストン製のタイヤ数百万個をリコール(無料回収・修理)すべきだとの見解を示した。・・・(中略)・・・・全米ハイウエー輸送安全局(NHTSA)のスポ−クスマン、ハード氏によると、同局はフォードとブリヂストン両社に対し、問題のタイヤに関するより詳細な情報提供を求めており、年内に入手する見通し。・・・(中略)・・・衝突事故は33件で、負傷者27人、死者4人が出ている。
2000年8月4日、米国百貨店のシアーズ・ローバックは、ブリヂストン米国子会社ファイヤストン製のタイヤについて、一部販売を見合わせたことを明らかにした。・・・(中略)・・・NHTSAには92年以来、同タイヤが関係するとされる21人の死亡と193件の衝突事故の報告が寄せられており、規制当局は同タイヤについて、トレッドが外れる事故が起きる恐れがあるかどうか、調査を進めている。今回の販売中止については、シアーズの発表に先立ち、米誌USトゥデーが報じていた(両記事とも出所はブルームバーグ、一部加筆)。
2000年に株価が大きく下がったブリヂストンの場合、会社側は死亡事故を当初甘く見ており、投資家に明確に伝える意思に欠けていた。こうした場合、その後小出しに出てくるニュースの方が、ますます重大かつ深刻であることが多い。事実、2000年末で確認されている死者は100人以上であることが判明している。
会社の中間決算発表は2000年7月31日、投資家向け説明会も翌8月1日であったが、会社側よりこの件に関する説明は一切なかった。プロでないあなたは、アメリカ発のニュースを読むことや決算説明会に出席することも出来ないので、8月4日(2400円)まで気が付かないが、8月5日(土)の日経新聞夕刊に掲載後、7日や8日には、2000円から2200円で売却出来た。さらに、10日に一時ストップ安をつけた時でも、事の重大さを認識し、決断力さえあれば高いところで売れた。
2000年末の株価は半値以下の1040円となった。投資で大きく損をしないためには、ニュースの重大さを的確に判断できる能力と決断力の組み合わせが大切である。たとえ、あなたがアメリカのニュースを即座に手に入れなくとも、あなたの決断力で最悪の事態は免れたかも知れない。いまだに売り圧力が残っているのは、いち早くこの一連のニュースを入手できたプロの投資家でさえ、決断力に欠けていたため必ずしも売り切れず、しかもこの事件はまだ終結していないからだ。
→「深まる危機と会社の対応の差が株価に反映される」
これは2000年6月末の雪印乳業についても同じである。
(なお、ブリヂストンはこの一連の対応の失敗を認め、その後、遅ればせながら情報公開に積極的となった。)